古(いにしえ)より伝わる雅楽の枠内において、「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」は日本独自の歌と舞の精神を現す最も古い形式のひとつです。神話や神事、古代国家の成立の物語などが歌詞や舞の根底にあり、その儀礼性と美しさは宮廷文化の核心でもありました。本記事では「雅楽 国風歌舞 とは」という問いに答え、歴史・種類・演奏と舞の特徴・現代での継承と復興という観点から詳しく解説します。神楽歌、東遊、久米舞など、日本古来の舞を知る手がかりになる内容です。
雅楽 国風歌舞 とは
雅楽とは、日本古来の歌や舞、また中国大陸や朝鮮半島から伝来した楽舞、平安時代の歌曲等が融合して成立した日本最古の宮廷音楽・舞踊の総称です。国風歌舞とはその中で、外来の影響を受ける以前からの日本固有の歌舞で、神社の神事や皇室の儀式で神聖な意味を持って歌われ、舞われてきました。雅楽の体系の中では、国風歌舞は歌唱と舞踊が一体となる歌舞であり、神楽歌、久米歌、東遊などが含まれます。形式・内容とも儀礼性が非常に高く、神道的・皇室的な色彩が濃いのが特徴です。
名称と読み方の意味
国風歌舞は「くにぶりのうたまい」と読みます。「国風」とは国の風俗・伝統、「歌舞」は歌と舞を指し、総じて日本古来の歌と舞の形式を示す言葉です。雅楽の分類において、この語は「外来音楽」や「歌物」と区別され、日本独特の歌舞形式として位置付けられています。
起源と成立の時期
国風歌舞の起源は古代まで遡ります。諸説ありますが、『古事記』『日本書紀』に収録された神話や神事の歌がその源であり、大和政権や皇室の儀式に次第に統合されました。5〜6世紀の県域的な祭礼から、平安時代に宮廷に取り込まれ、体系化され現在に伝わっています。伝承機関の整備や曲の復興により、形式は平安期に整い、近世に再興された例も多いです。
雅楽における位置付け
雅楽の三大分類は「国風歌舞」「大陸系の楽舞(舞楽・管絃)」そして「歌物(催馬楽・朗詠など)」です。国風歌舞はそのうちの一つであり、他と比べて歌と舞が中心で器楽主体ではありません。他の雅楽形式と比べて演奏機会は限られがちですが、儀礼性・象徴性において非常に重要な役割を担っています。
国風歌舞の種類

国風歌舞には複数の個別の歌舞形式があり、それぞれ起源・歌詞・舞いのスタイルが異なります。代表的なものに神楽歌、久米歌、東遊、倭歌、和舞、五節舞などがあります。これらは古代の神話や国家の伝説、地方風俗歌が源で、儀式用途や奉納、祭祀の場で用いられてきました。復興されたものもあれば現在では限られた場面で見ることができるものもあります。
神楽歌
神楽歌は神話に由来し、神道の神事に深く関わる歌舞です。天照大神が天石屋戸に籠った故事などが題材で、「御神楽ノ儀」と呼ばれる宮中儀礼で奏されます。歌の一部には人長舞という舞が付けられ、祭祀的象徴としての意味を強く持ちます。歌詞・曲調共に非常に古い形式を保ち、雅楽の中でも最も原始的な側面を残しています。
久米歌/久米舞
久米歌は戦勝歌や国家統一の物語にもとづき、大和時代の歌として歌われ、後に久米舞として舞まで伴う形式となりました。一度途絶えたものの18世紀に再興され、現在では即位礼や重要儀式で演じられます。曲と舞が強く結び付いているのが特徴で、舞人の所作や伴奏楽器に古来の宮廷雅楽の様子が色濃く残っています。
東遊(あづまあそび)
東遊は東国の風俗歌に由来し、祭礼や神社への奉納歌舞として宮廷で演じられました。歌舞の構成は組曲形式であるものが多く、曲に舞が加わる部分があります。演奏には篳篥・高麗笛・和琴・笏拍子などが使われ、歌詞は自然・伝説・季節の風物を詠むものが中心です。明治以降の復興や継承が進められています。
倭歌・和舞
倭歌は大和地方の歌で、倭舞または和舞として舞と歌が結び付きます。曲数は少なく、典礼的用途が強いものが多く、宮中祭祀などで限定的に演じられることがあります。装束や舞いの動きは平安朝の貴族文化の影響を受け、雅やかさを重んじた様式が特徴です。
五節舞とその他の舞唱形式
五節舞は未婚の女性により舞われる舞で、雅楽の中では現在唯一の女性専用舞とも言われています。装束も十二単衣で優雅に纏い、檜扇を持って舞います。大嘗祭などの儀礼で特別の場合に演じられることが多く、舞人・歌詞・舞台全体で清浄さを表現します。他に人長舞など、特殊な歌舞形式もあります。
国風歌舞の音と舞の特徴
国風歌舞の音・舞には共通する特徴があり、それらが雅楽全体の中での説得力を生みます。歌唱形式、楽器編成、舞の動き、装束の様式、儀礼性など、多面的にその様式が構築されています。他の雅楽形式と比較すると、歌と声を重視し、舞いの動きも歌詞や詞章の内容と一致させた動きを取ることが多いです。楽器は内奏的であり、表現は内面的で神聖なものです。
歌唱の形式と言語
歌われる言語は日本語が中心で、古語や神話・伝承の歌詞が使われます。他の歌物や外来音楽とは異なり、漢詩や中国語を使うことは少なく、日本固有の語感・発音が重視されます。節回しも器楽伴奏に寄り添い、拍節のないものが多いため、声そのものの響きや間(ま)が重要です。
楽器編成
国風歌舞には通常、和琴・笏拍子・神楽笛または龍笛・篳篥・高麗笛などの歌舞専用器具が使用されます。これらは外来楽器よりもむしろ国内で古くからあったもの、または外来のものを日本化したものです。打楽器も使用されることがありますが、装飾的・アクセントとしての役割にとどまります。
舞の所作と装束
舞の動きは非常にゆったりとしており、手の動き・足の運び・身体の角度など一つ一つに意味があります。装束には十二単衣や宮廷の儀礼装束が用いられることが多く、色使いや形容が伝統に則っています。五節舞のように女性専用舞があるなど、性別・身分による役割も古来から定まっています。
歴史の流れと復興・現代における継承
国風歌舞は古代から中世にかけて衰退の時期を迎え、儀礼制度の縮小や伝統の断絶が生じました。しかし江戸時代などに一部が復興され、現在では宮廷儀礼や大嘗祭など限られた場で演じられています。伝承団体も存在し、演奏・舞台公開・研究が継続されています。楽譜・舞踊記録の整備、舞人の育成などが行われており、文化財としての保護も進んでいます。
衰退と復興の歴史
中世以降、国風歌舞は祭祀行為や宮廷制度の変動により演じられる機会が激減しました。それでも江戸時代には復興の動きがあり、特に久米舞・五節舞などの形式が再興されました。近年では文化政策や伝統芸能の保護の流れの中で保存・研究が行われ、式典での再現や演奏会での公開がなされています。
現在の演者と伝承組織
伝承者は宮内庁楽部や民間の雅楽団体などがあり、技芸だけでなく文献や楽譜の研究がなされています。舞や歌を習う門戸は限られているものの、舞人・楽師を養成する学校や研修制度があり、後継者育成の体制が維持されています。また一定の公開演奏・奉納演奏が行われ、国風歌舞の実際を見聞きする機会が増えています。
現代文化との関わりと意義
国風歌舞は単なる古典芸術にとどまらず、日本の文化的アイデンティティを象徴する存在です。祭礼・即位礼・神社行事などでの奉納により、現代社会とのつながりが保たれています。さらに古典音楽や舞踊の研究分野、国際文化交流でも取り上げられることがあり、その形式美と儀礼性が評価されています。
まとめ
国風歌舞は雅楽の中でも特に日本らしさが色濃く表れた歌と舞の形式であり、神話や伝統、国家の祭祀と深く結び付いています。神楽歌・久米舞・東遊・倭歌・五節舞など、各形式にはそれぞれの起源と特色があり、歌唱・舞・装束・歌詞の内容に古代からの伝統が息づいています。
歴史の流れの中で演じる機会が減少した時期もありましたが、復興と現代的な保護によって伝承が続けられており、儀礼・文化アイデンティティとしての意義は今なお強いものがあります。雅楽 国風歌舞という言葉を知った後には、神社や宮廷の儀式で実際に舞われる国風歌舞の様子を観ることで、その伝統と美を肌で感じられるようになるでしょう。
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